アラブの春と幻
軍人トップの新大統領が就任したばかりのエジプト。混乱する社会情勢の中、女性への性的暴行が増加し、大きな社会問題となっています。その背景にある根深い闇を取材しました。
今、エジプトのカイロでは、女性たちによる反セクハラデモが頻発している。
デモの最中、男が、警察官に連行されてきた。
聞けば、デモ参加予定者の女性を、ここまで乗せてきたタクシー運転手だという。
被害を受けた参加者は、「彼は、わたしのデモのビラを見ると、笑いながら、いやらしい言葉を投げつけたので、わたしは不快になりました」と語った。
戒律の厳しいイスラム教徒の多い国で、こうした女性によるデモが広がりを見せる背景には、ある事件が関係している。
暴行を受け、重い傷を負った女性を6月11日、就任早々に見舞ったシシ大統領。
シシ大統領は「とても許せないことが起きて、本当に申し訳ない」と話した。
シシ大統領の就任を祝う集会の場で、参加した女性に対する性にからむ暴行事件が、多数発生した。
さらに国連の調査によれば、エジプト人女性の99%が、性的な嫌がらせを受けた経験があるという。
ある映像には、2013年6月、政治デモのさなか、男たちによって女性が物陰に連れ込まれる様子が映されていた。
ラニアさんも、同じ時期に被害を受けた1人。
反政府デモに参加中、政府支持者の男たちに襲われたという。
被害を受けたラニアさんは、「男たちは、わたしを囲んでモスク(寺院)に連行し、頭のスカーフをはぎ取りました。(そして)わたしを殴り、服を破り取ったのです」と語った。
決して許されない、女性へのセクハラや暴行事件だが、3年半前の「アラブの春」以降、事件は増加傾向にあるという。
アインシャムス大学社会部のサミア・ヒドル教授は「(セクハラを)起こすのは、お金がなくて結婚できない男なんです。ところが、経済は厳しく、観光も駄目。労働者も職がない。社会のモラルも崩壊しているんです」と語った。
エジプト軍のトップだったシシ大統領は、女性への暴力に対して、今後、厳罰をもって抑え込む方針を示しているが、経済の低迷や社会の混乱からの脱却が課題となっている。
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